イノベーション普及学とは、新技術、新製品、スタイル、情報、知識、行動様式、伝染病などの普及過程やイノベーションの普及による社会、文化、集団がいかに変化するかといった変動の過程を分析する学問である。主にマーケティングの世界で用いられ、経済学者や実務家などが中心に、この学問に基いた研究や実践を進めている。イノベーションは、その製品について、性能や低コスト性などの利点があっても、普及しない可能性がある。米国商務省の推計によれば、製品全体の9割は、発売後4年のうちに消えてなくなる。その消えてなくなる製品の中には、普及すれば、社会に影響を与える製品もあることが考えられる。そのようなイノベーションが普及しないのは損失であり、重要なイノベーションならばそれらを普及させていく必要があると思われる。そのためには、イノベーションの普及により、社会がどのように変遷していくかを分析することが必要である。
 本研究の目的は、このS字カーブの発生メカニズムを、物理的な自然現象のアナロジーを利用し、イノベーション普及の空間的な広がりを解明してくことである。 自然科学において拡散現象を取り扱った研究は数多くある。それらの拡散現象の類似性を利用して、社会科学でのイノベーションの拡散現象に適用することを目的とする。


Reference

Kazunori Shinohara and Hiroshi Okuda, Dynamic Innovation Diffusion Modelling, Computational Economics, Vol.35, No.1, pp. 51-62, 2010.